フリージング・レインにご注意

過冷却(氷点下)の雨粒が着地のショックで凍ります

 1〜2ヶ月前にオクラホマを中心に大規模なフリージング・レインが降りました。北米ではありふれた気象で、軽ければスリップ事故に気をつける程度で済みますが、レキシントンで2003年2月のフリージング・レインを経験した私たちは、ケンタッキーまで来ないように祈り天気予報を冷や冷やしながら眺めていました。

 フリージング・レインは、比較的暖かい上空の気流に運ばれてきた雨が、地表に達するまでに冷たい気流で氷点下に冷やされて着地と同時に凍結する気象です。テレビで実験を見たことがありますが、水は、不純物なしに静かに冷やしていくと摂氏0度以下になっても氷りません。これを過冷却というのだそうですが、机をたたいて軽いショックを与えるだけで一瞬にして凍ります。これが、自然界で起きるとフリージング・レインというこわい雨になります。

 2003年2月15日土曜日の夜に始まったフリージング・レインは、木々にまつわりつき、氷の重さで次第にしならせ、幹や太い枝を倒したり折ったりして市内各所で電線を切断、11万5千軒が停電しました。停電すると、電気暖房なら当然ですが、ガス暖房でも暖が取れなくなるのが普通です。温かいお湯も普通は出なくなります。要領がいい被災者は、即座に決断してホテルや学校など臨時の避難所に逃れました。我が家は、16日日曜日の朝から18日の夕方まで約60時間にわたり停電。外は-5℃の寒さでしたから、暖炉の前で家族全員が身を寄せ合い、手動で(初めて)ガスに着火し、寝袋や布団にくるまって寝ましたが、それでも寒いの何のって〜。

 日本人駐在員は、木々がまだ大きく育っていない新興団地に居をかまえ、助かったご家族が多かったようですが、皮肉なのは、私たちの悲劇的な体験も、停電しなかった家の皆さんには全く実感できないことです。私は、当時の掲示板で日本人の被災者仲間に声をかけ、それぞれが味わった辛酸の経験を記録しておきましたので、冬の非常時対策として是非お読みください。ガス代が上がって、最近の新築の家は電気暖房が増えているせいか、先日(=2月5日)に電気使用量が夏場のピークを上回ったのだそうです。冷房の使い過ぎで夏に大停電が起きることもあるくらいですから、暖房の使い過ぎで冬に大停電が起きてもおかしくはない…くわばらくわばら。

 一つ前の記事でご紹介した94年1月のアイス・ストームは、赴任の1年前の出来事ですから私自身は知らないのですが、やはり同規模の大停電が起きたのだそうです。ケンタッキーに見えたばかりのある方が、車に乗ってフリージング・レイン見物をしていたところ、ドアが凍りついて車に閉じ込められてしまったそうです。笑い話でおっしゃっていましたが、誰も助けに来てくれなかったら命に関わる一大事です。地震、雷、竜巻、洪水、フリージング・レイン…皆様どうぞご注意ください。