パニックの7割はカトリック教徒です。
さて、ここで今回の本題です。各宗派の地理的な分布についてお話しましょう。カトリックは、プロテスタントに信者の総数ではかないませんが、1宗派として見れば、何といっても最大宗教組織で全米に広く分布しています。ケネディー家などアイルランド系移民が多いニューイングランド地方で強く、政治的には民主党リベラルを支えています。特に人口比で信者が多いのは地図で黄色で示した地域ですが、メキシカンが多い南部カリフォルニアやメキシコ国境沿いも含まれています。
カトリックに数で対抗できるのは、福音主義のプロテスタント、中でもバプティスト派です。ケンタッキーも含むアメリカ南部の一帯は、福音主義のプロテスタントが大勢住んでおり「バイブル・ベルト」と呼ばれいます。地図上で赤く塗り分けた地域です。妊娠中絶を否定する共和党保守派の強力な支持基盤で、2000年と2004年の大統領選挙でブッシュ政権の誕生と再選の原動力となりました。中でも最大勢力の「サザン・バプティスト連盟」が本拠を置くテネシー州のナッシュビルは「バイブル・ベルトのバックル」とも呼ばれることもあります。
実は敬虔なキリスト教徒が多いのは、北はノースダコタ州から南はテキサス州を結ぶ「バイブル・ストリップ」だという説もあるように、大西洋沿岸の諸州は同じ南部でも信仰の篤い地域だという訳ではなく、「バイブル・ベルト」とはやはりサザン・バプティストの牙城を指す名前だと理解すべきなのでしょう。
バプティスト派は、イギリス国教会と対立し新天地をアメリカに求めた清教徒(ピューリタン)の流れを汲むプロテスタントです。形だけの幼児洗礼を否定して、信者はしっかり物心がついてから自ら洗礼(Baptism)を望みキリスト教徒になるという厳格な考え方をしています。牧師も平信徒も神の前には平等で、教会の役職者も信者総会で選ばれる民主主義的なシステムです。
ある日、「貴方はどの宗派ですか?」という私の質問に「クリスチャンです」と答える人がいて、「???」と思ったことがありますが、そもそも真のキリスト教徒に派閥は存在しないと考える人々がいます。内規など必要なことは各々の教会が独自に定めます。宗派に分かれていなかった初期の教会の精神に戻ろうというので、復興主義(Restorationism)に分類されるグループも含まれます。表中では、独立/非宗派グループとしました。
ペンテコステ派は、キリスト昇天の後、聖霊が使徒たちに宣教のため外国語を話す力を賜ったという聖霊降臨(ペンテコステ)の奇跡の伝えが信仰の拠り所にあるようです。本当は私のような部外者が勝手に想像することは避けるべきなのですが、この宗派にはどちらかというと感性に訴えるところが強いのでしょうか?様々な賛美歌やゴスペル・ソングを生み出し、さらにエルビス・プレスリーらを通じて現代音楽に強い影響を与えました。
福音主義のキリスト教徒は、非妥協的な性向があります。中には、キリスト教原理主義と呼ばれるほど急進的な考え方を持つグループもあり、表では、おそらく大半がその他プロテスタントに分類されているのではないかと思います。逆に、16世紀の宗教改革をリードしたルター派やカルヴィン派、イギリス国教会に近い考え方をしているプロテスタントは「主流」と呼ばれており、信者は、中西部の宗派混在地帯にカトリックとともに広く分布しています。
他のキリスト教信者には異端視されているモルモン教の信者は、ユタ州とアイダホ州の南部に偏在しています。西海岸北部のワシントン州やオレゴン州などには無宗教の人々が多く「無教会ベルト」と呼ばれることもあるそうです。
長くなりますので、福音主義プロテスタント以外の宗派やキリスト教以外の宗教については、また次の機会に勉強したいと思います。
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